Microsoft Word - ★基本的考え方120426.doc


歴史・文化資産を活かした
復興まちづくりに関する基本的考え方
2012 年4月
国土交通省都市局
【目 次】
はじめに
くろまる本書作成の背景・目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
くろまる本書の作成方法とその内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第1章 歴史・文化資産を活かした復興まちづくりの意義
くろまる誇りや愛着の持てる故郷を再生し、
観光・交流による活力あるまちづくりを推進することができる・・・・・・・・3
くろまる歴史・文化資産を読み解き、故郷の魅力を見出すことができる・・・・・・・・4
くろまる歴史・文化資産の再生・活用により土地の記憶を継承することができる・・・・5
第2章 歴史・文化資産の見方・調べ方
くろまる東日本の太平洋沿岸地域の豊かな歴史・文化資産・・・・・・・・・・・・・・7
くろまる歴史・文化資産を読み解き、復興まちづくりに活かす・・・・・・・・・・・・9
第3章 歴史・文化資産の再生・活用の実現に向けて
1.歴史的建造物等を活かした復興まちづくり・・・・・・・・・・・・・・・・14
2.基盤整備等における歴史・文化資産を活かした復興まちづくり
2-1.従前市街地の整備等における地域らしさの再生・創出・・・・・・・・19
2-2.高台移転における景観等への配慮と歴史文化の継承・・・・・・・・・22
2-3.祭礼等への配慮と地域コミュニティの維持・再生・・・・・・・・・・28
3.広域的な歴史・文化資産を活かした復興まちづくり・・・・・・・・・・・・31 1はじめに
くろまる本書作成の背景・目的
東日本大震災による東日本の太平洋沿岸地域における被害は、極めて甚大でかつ広範囲
に及び、被災地域の人々が日々の暮らしの中で大切に育み、受け継いできた故郷のランド
マークとなっている建造物、慣れ親しんできたまちなみ、心の拠り所となる祭礼の場や用
具、さらに多くの人々を惹きつける地域らしい魅力ある風景等、故郷の誇りともいえる多
様な資産も大きな被害を受けた。
時間面や財政面等様々な制約条件下におかれる復興まちづくりにおいては、こうした資
産に対する配慮が十分に行き届かず、被災した歴史的建造物等の解体や、大規模な基盤整
備に伴う歴史的な道筋・街区形態の改変、さらに身近な生活風景の喪失等が進み、まちの
履歴や土地の記憶、ひいては心の拠り所となる地域らしさが失われてしまう恐れがある。
しかし、これらの資産は、復興にあたり、誇りや愛着を持てる故郷を再生し、観光や交
流による活力あるまちづくりを進めるうえで、貴重な資源となりうるものである。このた
め、復興まちづくりの実施にあたっては、都市機能の回復や生活の再建とともに、歴史的
建造物やまちなみの再生・活用による故郷への愛着の回復、地域らしい景観や観光資源を
活かした地域活力の向上、
さらに祭礼による地域コミュニティの回復といった視点を持ち、
これらの資産を後世に継承していくことが重要である。
こうした背景から、本書は、歴史的・文化的に価値のある建造物に加え、地域らしい景
観や地域が育んできた日常の風景、地場の自然素材、祭礼等を「歴史・文化資産」として
捉え、これらの再生・活用に関する基本的な考え方及び具体的な再生・活用方策を示し、
市町村や県による地域らしい復興まちづくりを支援することを目的として作成している。
なお、本書については、市町村又は県が基盤整備や道路・河川の復旧・復興事業等の計
画・設計、建築物の誘導やまちなみの形成、さらに広域的な復興関連計画の策定等の各場
面において参考として活用していただくことを想定している。また、本書が対象とする歴
史・文化資産は、文化財としての価値を有する場合が多く、観光・産業の振興につながり
うる資源でもあることから、各市町村・県の文化財部局、観光・産業振興部局や、歴史文
化の専門家等と連携して活用することが望ましい。 2くろまる本書の作成方法とその内容
本書は、
震災後に東日本の太平洋沿岸地域を基本として 10 地区で実施した歴史・文化資
産の再生・活用に関するケーススタディで得られた成果に基づき、歴史、建築、土木、景
観等の各分野の学識経験者等からの助言を得て作成している。
市町村や県が主体となった歴史・文化資産を活かした復興まちづくりを支援するため、
まず、第1章では、歴史・文化資産を活かした復興まちづくりの意義を示し、再生・活用
が想定できる歴史・文化資産とその手法を例示している。次に、第2章では、この地域の
歴史を概観し、各地区で歴史・文化資産の状況を把握できるよう、その見方・調べ方につ
いて整理している。この2つの章については、市町村や県の復興まちづくりの担当者・関
係者の方々が、今後、歴史・文化資産の再生・活用を検討する際の参考となるように作成
している。
最後に、第3章では、ケーススタディで得られた成果に基づき、個々の歴史的建造物の
活用、基盤整備時におけるまちなみ・景観・風景への配慮、及び広域的な歴史・文化資産
の活用等のテーマごとに復興まちづくりの基本的な方向性と実現に向けた方策を事例とと
もに示している。本章は、歴史・文化資産の再生・活用を具体的に検討している地域の実
情に応じて取組みの展開の参考となるように作成している。また、歴史・文化資産チェッ
クリストを設けているので、今後、歴史・文化資産の再生・活用の検討を進めようする場
合に活用されることが望まれる。
(注記)国土交通省都市局において、
「復興まちづくりにおける景観・都市空間形成の基本的考え
方-市街地・集落整備における都市デザイン面からの配慮事項-」を策定しているので、
景観・都市空間形成に係る部分については、こちらを併せて参照されたい。 3第1章 歴史・文化資産を活かした復興まちづくりの意義
くろまる誇りや愛着の持てる故郷を再生し、観光・交流による活力あるまちづく
りを推進することができる
復興まちづくりにおいては、大規模な基盤整備に伴い、それまで地域が築き上げてきた
暮らしのつながりや土地の記憶が失われることが懸念される。しかし、復興後のまちに暮
らすのは、まさにこの地を故郷として住み続けてきた人々であり、被災前の暮らしと切り
離された無記憶のまちとすることは望ましくない。
人々が日々の暮らしの中で大切に守り、育んできた歴史・文化資産は、暮らしのつなが
りや土地の記憶を受け継ぐものであり、故郷への愛着を育み、地域コミュニティ再生の拠
り所となりうる。こうした「ふるさと資源」を丹念に読み解き、復興まちづくりにおいて
再生・活用し、復興後のまちを誇りや愛着の持てる故郷として再生していくことが重要で
ある。
また、地域の産業を支え続けてきた産業施設やインフラ、産業集積の証である問屋街の
まちなみ、
さらに地場の自然素材や伝統技術等、
地場産業や生業に係る歴史・文化資産は、
地域らしい観光・産業の振興につながる資源であるとともに、交流の促進につながる資源
ともなりうる。復興まちづくりにおいて、こうした「なりわい資源」を再生・活用し、活
力あるまちづくりを進めることも重要である。
くろまる故郷への愛着を育み、コミュニティを再生する拠り所
くろまる観光・産業の振興や交流の促進につながる資源
「ふるさと資源」の
再生・活用
「なりわい資源」の
再生・活用
・故郷のランドマークとなっ
ている建造物
・日頃から慣れ親しんできた
まちなみ
・受け継がれてきた祭礼 等
・地域の産業を支え続けてき
た産業遺産・土木遺産
・産業の発展とともに形成さ
れた歴史的まちなみ
・地場産材や伝統技術 等
住民が見慣れた港町の風景。漁師の帰港のより
所でもある(気仙沼市)
酒造業を営む建造物の外観。地域の顔であり、
観光客にとっても大切な資源である
(気仙沼市) 4くろまる歴史・文化資産を読み解き、故郷の魅力を再発見することができる
復興まちづくりの資源となる歴史・文化資産は、長い歴史に育まれ、暮らしの中に幾
重にも積み重なっている。このような資産は文化財等、一定の価値付けがなされている
資産に限らず、ランドマークとして親しまれている歴史的建造物、まちの履歴を物語る
街路網や敷地割、土地の記憶を伝える地名や石碑、地場の自然素材を用いた石積みや伝
統技術を用いた家屋、世代を超えて受け継がれてきた祭礼等、暮らしの中で育まれてき
た身近な資産まで実に多様な資産がある。
こうした歴史・文化資産を丹念に読み解いていくことは、まちの履歴や土地の記憶を
紡ぐとともに、故郷の魅力を再発見することにもつながる。魅力ある故郷の再生に向け
て、幅広い視点から歴史・文化資産を読み解いていくことが重要である。
また、過去の津波の記憶が石碑として残されているように、この度の津波により被害
を受けた建造物や津波到達点の痕跡、あるいは復興に向けた計画や事業に係る記録等、
震災における被害や復興の取組み自体も、後世から見れば土地の記憶を伝える資源の一
つと捉えることができる。復興過程における十分な検討を踏まえ、こうした資源につい
ても歴史・文化資産として後世に継承していくことも考えられる。
≪再生・活用が期待される歴史・文化資産の例≫
しろまる文化財としての価値付けがなされている資産
・文化財(国指定、国登録、県指定、市町村指定) 等
-有形文化財
-無形文化財
-有形・無形民俗文化財
-記念物(史跡、名勝、天然記念物) 等
しろまる暮らしの中で育まれてきた身近な資産
・地域のシンボルとなる建造物
・地域で親しまれてきたまちなみや景観
・地場産材(石材やスレート等)を用いた建築物や工作物
・伝統技術(気仙大工等)を用いて建築された建築物
・まちの履歴を物語る街路網や敷地割
・土地の記憶を伝える地名
・過去の津波被害を伝える石碑 等 5くろまる歴史・文化資産の再生・活用により土地の記憶を継承することができる
歴史・文化資産の再生・活用方策は、資産の類型や被災の程度、復興まちづくりにおけ
る位置付け等に応じて、様々な手法が考えられるが、適切な手法を用いて再生・活用を進
め、そのまちの履歴や土地の記憶を後世に継承していくことが望ましい。
≪歴史・文化資産の再生・活用手法の例≫
しろまる被災した建造物等を修復・再生し、活用する
被災した建造物等の全部又は一部を修復・再生し、被災前に近い状態で活用する方法が
考えられる。また、神戸港震災メモリアルパークのように、被害の記憶を伝える象徴的な
建造物等を保存し、後世に伝える手法も考えられる。
しろまる記憶を残し、伝える
地域で親しまれてきた建造物等が、津波や地震により壊滅的な被害を受け、修復や再
生が困難な場合等は、取り壊された建築物や土木構造物の材料(レンガやタイル等)の
一部を、新たに整備する広場や建築物の外壁に部分的に活用する等、建造物等の記憶を
伝える手法が考えられる。また、石碑やプレート等を用いて、津波被害の記憶を後世に
伝える手法も考えられる。
被災したままの姿で。震災の教訓を後世に伝
える神戸港震災メモリアルパーク(神戸市)
過去の津波の教訓を伝える石碑
(岩手県宮古市)
明治の三陸大津波の位置を示すプレート
(岩手県普代村)
取り壊された建築物等のレンガやタイル等を
組み合わせ、平板として広場や外壁面に貼り付
けている(東京都杉並区)
修理・修復された施設の例(兵庫県佐用町平福地区)
(資料提供:兵庫県)
(左:修復前、右:修復後) 6しろまる歴史的な建造物等の記録を取り、伝える
壊滅的な被害を受けた建造物をやむなく解体する場合や無形の文化財の喪失が懸念さ
れる場合は、そうした歴史・文化資産の意味や価値を整理し、記録を取り、後世に伝え
る手法が考えられる。
また、被災前のまちの風景や色・音等の記憶を後世に伝える手法として、過去のまち
なみや行事の映像・画像の記録・保存や、まちなみの模型復元等の手法も考えられる。
神戸大学、横浜市立大学、武庫川女子大学が中心となり、気仙沼のまちなみの
模型復元ワークショップを行っている
(資料提供:311まるごとアーカイブス、独立行政法人防災科学技術研究所) 7第2章 歴史・文化資産の見方・調べ方
くろまる東日本の太平洋沿岸地域の豊かな歴史・文化資産
東日本の太平洋沿岸地域は、北上山地に代表される山地、北上川や阿武隈川等の河川、さ
らに複雑に入り組むリアス式海岸や広大な仙台平野等、変化に富んだ自然地形を有している。
こうした豊かな自然地形を基盤として、主に近世以降、奥州街道や浜街道、さらにそれらを
東西に結ぶ街道や、沿岸部及び河川における舟運路等の交通網が整備された。それらの交通
網の結節点等に、宿場町や港町、漁村集落等、様々な性格を持つまちが開かれ、また、近代
以降は製鉄業等の産業都市も発展してきた。さらに、そうしたまちでは、日々の暮らしの中
で、個性豊かな祭礼や地場産業が営まれてきた。
こうした歴史を背景として、この地域には豊富な歴史・文化資産が育まれ、現在に受け継
がれている。
【近世に整備された都市基盤と集落】
しろまる奥州街道と浜街道
・五街道の一つである奥州街道と並行して、
海岸沿いには浜街道(北から三陸浜街道、
東浜街道、陸前浜街道)が通り、要所には
宿場が設けられた。
しろまる内陸と浜を繋ぐ街道
・宮城県北部から岩手県にかけて、北上山地
を越えて奥州街道と浜街道を東西に結ぶ幾
つもの街道が発達した。
しろまる発達した近世舟運
・沿岸部には江戸に至る舟運航路が開かれ、
寄港地となる港町が栄えた。
しろまる街道の結節点に栄える集落
・浜街道と東西を結ぶ街道が交わる地点の漁
村や宿場町は次第に栄え、地域の中核都市
へと発展し、歴史的まちなみが生まれた。
【海岸沿いの集落と文化】
しろまる個性豊かな漁村集落
・三陸沖は豊かな漁場であり、海岸沿いの多
様な立地条件のもと、古くから多くの漁村
が開け、個性ある景観を生み出している。
しろまる広域的に広がる土木遺産
・仙台平野においては仙台平野の排水と内陸
舟運等の機能をあわせ持つ貞山堀が建設さ
れた。近代期には製鉄等の産業発展に伴い
多くの土木遺産が生み出された。
しろまる豊かな景勝地
・松島をはじめリアス式海岸、浜景観、松原
等、古くからの景勝地に恵まれている。
しろまる祭礼や地場産業
・街道の結節点のまちや浜街道沿いの宿場
町、さらに漁村集落には、多様な祭礼や産
業等が根付いている。
しろまる明治、昭和の津波の痕跡
・明治 29 年、昭和 8 年等、
数度にわたる津波
被害を受け、それらの被害の痕跡や復興の
記録も多く残されている。
図 地域の歴史文化形成に関わる近世期の街道や舟運、宿場町、藩領等
久慈野田街道
宮古街道
盛街道
遠野街道
今泉街道
本吉街道
気仙沼街道
岩城街道
久慈
八戸
志津川
気仙沼
仙台
石巻三陸浜街道近世舟運航路気仙道・東浜街道奥州街道陸前浜街道
岩沼奥州街道
一関
盛岡
松島
相馬
釜石
大槌
陸前高田
野田
南相馬
いわき
相馬街道
相馬街道
御斎所街道
平潟街道
千厩街道
大船渡
宮古
拠点都市
主な街道
主な舟運
平野部
凡 例 8しかく東日本の太平洋沿岸地域に見られる歴史・文化資産(例)
天然スレートを活用した社寺(大船渡市)
気仙大工が大きく関わっていたと
される板倉(多賀城市)
岩手県沿岸部の虎舞(釜石市)
野蒜石を活用した港湾施設(松島町)
小高い場所にある神社と鎮守の森
(七ヶ浜町)
しろまる地場の自然素材・技術
旧奥州相馬藩領で行われる相馬野
馬追(南相馬市)
しろまる祭礼・コミュニティ
燈籠流しが行われている貞山堀
(多賀城市)
江戸時代に掘削された貞山堀
(岩沼市)
近代製鉄の交易を担ってきた桟橋
(釜石市)
仙台平野に広がる住居と居久根
(名取市)
しろまる土木遺産・産業遺産・生業景観
断崖が続く、陸中海岸国立公園の海岸
(田野畑村) 名勝指定を受けた浄土ヶ浜(宮古市)
リアス式海岸にある小さな漁村
(大船渡市根白地区)
しろまる豊かな景勝地・漁村集落
松林が続く海岸線(七ヶ浜町)
石巻街道沿いに残る歴史的建造物
(石巻市)
奥州市と大船渡市の間にある
世田米のまちなみ(住田町)
海から見た港町の景観(気仙沼市)
しろまる港町や宿場町のまちなみ 9くろまる歴史・文化資産を読み解き、復興まちづくりに活かす
地域の地形や歴史的変遷等、歴史・文化資産に関する各種情報をマップ化し、レイヤー
として重ねることで、その特性が認知しやすくなる。こうして読み解いた歴史・文化資産
を復興まちづくりに活かすためのプロセスの一例を以下に示す。
なお、こうしたプロセスを効率的・効果的に進めるためには、各市町村・県の文化財部
局、観光・産業振興部局や、歴史・文化の専門家等と連携して実施することが望ましい。
1地形図等から地形、地質の特徴を読みとる
山や丘に囲まれた地形・入江に立地する港町や漁村、山裾や微高地に立地する旧宿場町
等、古くから存在する町や通りは、自然地形や地質の特徴を活かしながら、その地に存在
し、発展してきた。
歴史・文化資産と地形条件等は密接に関連するものであり、歴史・文化資産の把握にあ
たっては、
まず、
傾斜の緩急や形状、
高低等の地形等の特徴を読みとることが重要である。
2各時代の市街地図からまちの変遷を知る
東日本の太平洋沿岸地域の地図は大正期には測図されており、各時代の地図を比較する
ことで、市街地の変遷やインフラ整備の過程を把握することができる。また、過去の津波
被害における復興計画等から、津波被害の状況やその後の市街地整備計画を読みとること
ができる。これらにより、まちの成り立ちを物語る街路網や敷地割、古くから立地する神
社仏閣等、まちの履歴や土地の記憶を読みとることができる。
【参考となる資料等】
・地形図(等高線、地形区分、河川等水系がわかるもの)
・自然環境保全基礎調査(環境省生物多様性情報システム)による植生図
・自治体で作成している緑地や自然環境の分布等の基礎情報図 等
しかく各種情報をレイヤーとして重ねることで歴史・文化資産の特性を読み解き、復興まちづくりに活かす
2各時代の市街地図からまちの変遷を知る
1地形図等から地形、地質の特徴を読みとる
3様々な資料から歴史・文化資産
の存在を知る
5被災状況を確認する
4現地調査、聞き取り調査等で確認する
・起伏や水系等地形的な特徴をわかりやす
くするよう、
等高線や河川等を図示する
・各時代における市街地の拡大、
形成過
程や過去の津波被害等を確認する
・歴史・文化資産の情報を補完
し、資産の位置等を図示する
・浸水区域や建物、インフラの
被災状況を図示する
地域の歴史・文化資産の特性と
被災状況の重ね図・被災地域の成り立ちと復興に
活用すべき資産の抽出
・歴史的に重要な地区、
資産の
検証 等
6復興まちづくりに活かす
等高線を図示し、地形の起伏・高
低を表現(宮古市) 10また、古くから存在した地区や市街地の再編が行われた形跡のない地区には、歴史的建
造物等が残存している場合が多い。そのため、各時代の地図の比較により、あらかじめそ
うした地区を抽出しておき、歴史・文化資産を把握するための現地調査等にあたり、調査
の優先度を高めることも考えられる。
3様々な資料から歴史・文化資産の存在を知る
市町村史や郷土史等、地域の歴史文化に係る文献・史料は様々あり、そうした資料をひ
もとくことで、地図等から読み解いたまちの履歴や土地の記憶に係る情報を補完したり、
地名や祭礼等暮らしの中で育まれてきた無形の資産に係る情報を把握したりすることがで
きる。
4現地調査や聞き取り調査等で確認する
建造物等の歴史・文化資産の残存状況や被災状況、あるいはまちなみや風景の状況等、
地図や資料から読みとることのできない情報は、実際の現地調査により把握・確認するこ
とが重要である。
また、歴史・文化資産に係る情報を持つ郷土史家や古老等への聞き取り調査を行い、生
活者の視点に立った情報の収集に努めることも大切である。
5被災状況を確認する
復興まちづくりを考えていく上での前提条件となる、津波による浸水区域や建物、イン
フラ等の被災状況を確認することが重要である。
6復興まちづくりに活かす
1〜4の調査を通じて得られた歴史・文化資産に関する各種情報をレイヤーとして重ね
ることで、
地域固有の成り立ちや重要な歴史・文化資産の特性等を読み解くことができる。
こうして得られた特性と被災状況等を踏まえ、復興まちづくりに活かしていくことが重要
である。
【参考となる資料等】
・国土地理院発行の旧版地図(大正期から昭和初期、昭和 20 年代(戦後)、昭和 40 年代、昭和末期から平成初期等各時代に作成(地域によって作成さ
れている年代が異なる))・過去の復興計画等大規模な市街地整備図 等
【参考となる資料等】
・国、県、市町村の指定・登録文化財
・周知の埋蔵文化財包蔵地の分布図
・江戸時代等の古絵図
・市町村史、郷土史等の地域の歴史に関する文献資料(史料)
・自治体・観光協会が作成する観光マップ、名所図
・昔の絵はがきや写真 等
【参考となる資料等】
・地域史に詳しい専門家(郷土史家、教育委員会等)や古老等への聞き取り
・小中学校等の校歌にある山や河川、地名
・寺社の由来、住職への聞き取り 等
古い写真から昔の地域の状況を確
認する(昭和 9 年の陸前高田市)
(出典:大船渡市立博物館『写真
にみる気仙沼II-昭和前半-』(平成 14 年))旧版地図に主要な街道や川道等
重要な情報を強調(石巻市)
現地調査により資産の状況を確認
する(宮古市)
別添の歴史・文化資産等の
マップを参照 11宮古市の作業結果
くろまる事例:宮古市の歴史・文化資産の特性と被災状況
【江戸時代末期】
しかく中心市街地の歴史的変遷(市街地形成過程)
【明治期〜大正初期】
【昭和初期】
【戦後・高度経済成長期】
しかく地域の歴史・文化資産の特性と被災状況
浜街道・宮古街道沿いの宮古地区と
鍬ヶ崎地区にまちが成立している。
2つのまちが埋立等で拡大し、あわ
せて道路が整備されたことにより、
2つのまちが連たんした市街地とし
て形成されてきた。
山田線の開通・宮古駅の開設によっ
て、街道沿いと埋立地にまちが拡大
し、市街化が急速に進行。
河川沿い等への市街地の拡大、
港湾機
能の拡充等、
今日の宮古市の中心市街
地が慨成した。
浜街道
宮古
鍬ヶ崎
切通し道路整備
【地域の歴史・文化の特性】
かつての行政中心地として
栄え近代建築が集積し醸し
出される風情ある町並み
漁村集落の町並み
商店や遊郭が建
ち並んだ花街の
風情ある町並み
【被災状況の確認(浸水区域図)】地域の歴史的変遷や被災状況等から、
復興において
保全活用すべき歴史・文化資産や地区を検討する。
復興整備における配慮や歴史文化の保全活用を重
点的に検討する区域等を検討する。
資料提供:宮古市・地域の文化遺産を活用した復興まちづくり検討委員会
昭和初期に建てられた看板
建築等が集積し、
昭和の雰囲
気を残す町並み
昭和初期の官庁街
だった落ち着きの
ある町並み
津波浸水区域
江戸時代から続く道路の沿道に
おける歴史的町並みの再生検討
土蔵等の再整備とメモリア
ルゲート広場整備の検討
町家、
土蔵等歴史的建造物の
修繕保全、活用の検討 12第3章 歴史・文化資産の再生・活用の実現に向けて
本章は、復興まちづくりにおいて、歴史・文化資産をふるさと資源やなりわい資源として再
生・活用するための基本的な方向性、
実現に向けた考え方・施策例等を示している。
そのため、
まず、
【1歴史・文化資産チェックリスト】を活用し、前章のプロセスを通じて把握された情
報をもとに、復興まちづくりにおいて再生・活用の可能性がある歴史・文化資産の状況を把握
する。次に、
【2復興まちづくりにおける課題】により、復興まちづくり計画や各種事業によ
る歴史・文化資産の観点から懸念される状況を把握する。これら2つの状況を踏まえ、
【3歴
史・文化資産の再生・活用のテーマ】を参考とし実現に向けて検討することが望まれる。
1.地域らしさを伝える個々の歴史・文化資産
しろまる歴史的な建造物(町家、商家、土蔵、板倉、近代建築、神社仏閣、農家等)
しろまる地場産材を用いた建造物(野蒜石を用いた護岸、スレートを用いた建築物等)
しろまる伝統技術を用いた建造物(気仙大工等によって建築された家屋や土蔵、板倉等)
しろまる土木遺産(護岸、港湾施設、水門・閘門、水路、橋梁等)
しろまる産業遺産(番屋や養殖筏等の漁業関連施設、製鉄業・鉱業関連施設等)
しろまる津波の痕跡、記憶(記念碑等の石碑、津波到達点の痕跡等)
3.広域的なつながりを伝える歴史・文化資産
しろまる地域の発展に寄与してきた旧街道や運河等の土木遺産
(浜街道や東西を結ぶ街道等の街道筋、貞山堀や水路等)
しろまる街道や舟運でつながる宿場や産業地
(一ノ関・千厩・室根・気仙沼に連なる伝統的酒造施設等)
しろまる藩政時代の領内や街道沿いに受け継がれる伝統行事
2.地域のまちなみや風景を形成する歴史・文化資産
しろまる歴史的なまちなみ(伝統的建造物群、古くから形成されている町、漁村集落等)
しろまる古くから継承されてきた町割やスケール感(敷地の間口、建物の配置や規模等)
しろまるまちの成り立ちを物語る街路網(街道や旧い道筋、神社への参道等)
しろまる景勝地(松島、リアス式海岸等)
しろまる地域で共有してきた海や山への眺望
(広場や高台等の視点場、海や山への見通しのきく道筋等)
しろまる自然環境や風土に応じて形成してきた景観(防潮林、防風林、屋敷林、居久根等)
しろまる祭礼の場、ルート(祭礼が行われる境内、道筋等)
しろまる土地の記憶を伝える地名・町名や通り名
【1歴史・文化資産チェックリスト】 13くろまる被災した歴史的建造物等(土木遺産を含む)の
解体の進行
くろまる地盤嵩上げ等の基盤整備による歴史的建造物
の滅失の恐れ
くろまる従前市街地における防潮堤の建設や地盤嵩上
げ等の基盤整備による影響
・市街地・集落と海や川の関係
・古い通りや道、街区形態、敷地割等
・敷地の間口や建物配置によるまちのスケール感
・祭礼の場、ルート 等
くろまる高台への移転による親しまれてきた自然環境
や景観への影響
くろまる従前の市街地・集落が非居住地に転換された場
合の歴史・文化資産の消失による土地の記憶の
風化
くろまる広域的な連携がとられず地域単位で復旧・復興
が行われることによる、
貞山堀や旧街道等の広
範囲にわたる土木遺産等における空間・風景の
連続性の喪失
くろまる街道等の広域的なつながりを意識しない整備
による宿場や産業地等の地域の衰退
くろまる広域で開催される祭礼等の伝統行事の消失
【2復興まちづくりにおける課題】
【3歴史・文化資産の
再生・活用のテーマ】
1.歴史的建造物等を
活かした復興まちづくり
(p14-18 参照)
2.基盤整備等における
歴史・文化資産を活かした
復興まちづくり
(p19-30 参照)
3.広域的な歴史・文化
資産を活かした復興まちづく
り(p31-33 参照) 14【基本的な方向性】
【基本的な方向性を実現するための方策】
【基本的な方向性を実現するための方策】
(1)まだ失われていない重要な歴史的建造物等を探す
しろまる津波・地震による被害を受けた地域にも、まだ価値が明らかにされていない歴史的建造物等
が残されている可能性がある。価値が明らかにされる前に解体が進行することを防ぐために
も、まず、重要な歴史的建造物等の所在に係る簡単な調査を行うことが望ましい。
しろまる調査にあたっては、教育委員会や研究機関、日本建築学会、土木学会、地域の歴史文化に係
る活動を行う市民団体等により、既に調査が行われている場合もあり、それらの活用を図る
ことが考えられる。調査が実施されていない場合も、これらの専門家等の協力を得て調査を
行うことが考えられる。
しろまる重要な歴史的建造物等の存在と価値を明らかにすることは、所有者等による保存活用に向け
た機運醸成のためにも重要である。
[施策例]
☞研究機関、日本建築学会、土木学会等の専門的・学術的な調査・分析
(2)土木遺産が地域の産業において果たしてきた役割とその価値を明らかにする
しろまる地域の産業と密接な結びつきのある土木遺産は、単体ではその価値がわかりづらく、また、
民間の施設である場合が多く、
価値が認識されないまま滅失が進む危険性がある。
このため、
それぞれの土木遺産が地域の産業において果たしてきた役割を明らかにすることで、一体と
して土木遺産の価値を把握することが望ましい。例えば、製鉄遺構については採掘、運搬、
加工、交易という一連の製鉄産業において果たしてきた役割を把握することが考えられる。
1.歴史的建造物等を活かした復興まちづくり
くろまる地域の歴史文化の象徴である歴史的建造物等は、復興まちづくりの中で地域らしさを継承
したり、地域住民の拠り所とするために、その価値を明らかにして保存するとともに、積
極的な活用を図る。
くろまる例えば、歴史的建造物等は、文化財保護の観点から適切に管理した上で、地域の歴史文化
を活かした商業、観光振興の拠点や地域住民の交流拠点等に活用することができる。
しかく歴史的建造物を地域の交流拠点として活用した事例
(静岡市旧五十嵐邸)
しかく土木遺産をイベント的に活用した事例
(大牟田市旧三井三池炭鉱万田坑跡) 15くろまる事例2:製鉄産業に係る土木遺産の関連文化財の総合的な把握(釜石市)
大橋地区
橋野地区
東部地域(中心市街地)
くろまる事例1:専門家の協力による歴史的建造物の分布と被災状況の調査(村田町・白河市)
しろまる宮城県村田町は近世城下町の町人地に、
蔵造りの
町家が多く残存し、
歴史的まちなみを形成してい
る。東日本大震災により、その多くが被災し、被
災を契機に取り壊される建物もみられた。
そのた
め、
文化財ドクター派遣事業を活用し、
建築士や
学識経験者の協力を得て、歴史的建造物の分布、
被災状況等の調査を実施している。
しろまる福島県白河市においては、
旧城下町地区が歴史ま
ちづくり法における歴史的風致維持向上計画の
重点区域に指定されている。東日本大震災によ
り、
土蔵や蔵造りの町家が被害を受けたため、NPO法人しらかわ建築サポートセンターが緊急調査
を行い、155 棟の歴史的建造物が被災しているこ
とが判明した。
この調査成果をもとに歴史まちづ
くり法に基づく歴史的風致形成建造物への指定
や修復計画の検討が行われている。
しかく村田町における
文化財ドクター
派遣事業
しかく村田町における
土蔵の被害
しろまる岩手県釜石市は、近代製鉄発祥の地である。内陸部
には採掘場、製鉄場、選鉱場等の遺構、港湾部には
桟橋等の遺構、
それらを繋ぐ形で運搬を担った鉄道
遺構、社宅などの遺構群が残っている。
しろまるこれらの土木遺産群は、現役施設も多く、使いやす
さを優先した補修や改修により、
歴史的価値が認識
されづらくなってきている。
価値が認識されないた
め、被災により解体されることが懸念される。
しかく幕末期に製鉄を行った橋野高炉跡
しかく釜石市の製鉄産業に係る
土木遺構の分布図
(街道沿いの赤色は集落や
市街地)
しろまる単体では価値がわかりづらい土木遺産について、
製鉄
産業の流れや市街地の変遷における、それぞれの土
木遺産の役割を明確にすることが有効である。
しろまるこうした土木遺産の分布を示したマップ作成や、
製鉄
システムの流れに沿って見学を行うことで土木遺産
群の価値に対する理解を深めるタウントレイル等、周辺の地域資源の活用と連携したフィールドミュージ
アムづくりに寄与する活動が考えられる。
<凡例>
くろまる国指定史跡
くろまる県指定史跡
くろまる市指定有形文化財
くろまる近代化産業遺産(経済産業省認定)
くろまるその他の近代化産業遺産
くろまる近代和風建築、古民家
くろまる新日本製鐵関連の体育施設
くろまる近代化産業遺産、歴史的建造物
採鉱・製鉄運搬等に係る街道
社宅
製鉄に係る港湾
発電所などインフラ施設と近代和風
建築
製鉄に係る街道 16(3)被災した歴史的建造物等の修理を行う
しろまる重要な歴史的建造物等については、現地でそのまま保存することが可能かどうか、立地場所
周辺の復興に伴う基盤整備の方向性を確認することが重要である。
しろまる現地保存が可能である場合、被災した歴史的建造物等は、そのまま放置して破損が進行し解
体につながらないように、早期に応急修理を行うことが望ましい。また、その後往時の姿に
再現する外観修景を行うことが考えられる。
しろまる歴史的建造物等の修理にあたっては、工法や材料等に価値がある場合、調査によりそれらの
特徴を明らかにすることが重要である。
しろまるなお、歴史的建造物等は文化財保護法に基づく重要文化財等への指定により、建築基準法の
適用の除外を受けることができ、その上で伝統的な工法等で修理を行うことが考えられる。
[施策例]
☞民間ファンドの活用
景観計画・歴史的風致維持向上計画に基づく街なみ環境整備事業の導入
(景観重要建造物・歴史的風致形成建造物の指定)
東日本大震災復興交付金の効果促進事業による買取、修理等
(4)歴史的建造物等の修理に必要な工法、材料の調達、職人育成を図る
しろまる歴史的建造物等の修理にあたって、修理方法に通じた専門家や職人等が地域に不足している
場合、修理の工法や材料、職人育成の手法等について、歴史的建造物等の保存活用の実績が
ある先進地の専門家から助言を得ることが考えられる。
しろまる歴史的建造物等について、伝統的な工法や材料による修理をすぐに行うことが困難である場
合には、土蔵の破損箇所を杉板で覆う等、代替的な措置を施すことで、将来的な修理の機会
まで、特徴ある工法や材料を損なわないように配慮することが考えられる。
しろまる歴史的建造物等の修理に地域の若手職人等を携わらせることで、将来的な歴史的建造物等の
維持や修理を担う職人育成につなげることが考えられる。
くろまる事例3:修理のための工法開発、材料調達、職人育成に向けた勉強会の開催(白河市)
しかく白河市の伝統工法と修理方法を考える勉強会
しろまる福島県白河市では、
東日本大震災において土蔵や蔵造
りの町家等に地震被害が出た。白河市は重要な歴史
的建造物を歴史的風致形成建造物に指定し、街なみ
環境整備事業の導入により応急修理を実施してい
る。
しろまる一方、
白河市では、
土蔵や蔵造りなどの伝統工法の修
理経験のある職人が不足している、土や瓦等の材料
が調達できない、等の課題があった。そこで、石川
県能登市で実績がある((注記))伝統工法に通じた専門
家や職人を招聘し、地元建築士等による NPO や地域
の職人等と勉強会を開催した。
しろまる3回の勉強会では、
白河独自の歴史的建造物の工法の
特色や、伝統工法を用いた歴史的建造物の修理方法
について話し合われた。
しろまる勉強会においては、
伝統工法と現代工法を組み合わせ
た応急修理方法、解体された歴史的建造物の部材保
存による材料調達方法、伝統工法を取り入れた修理
を職人に経験させる人材育成方法、などが話し合わ
れた。
(注記)石川県能登市は、
能登半島地震により市内の土蔵に大
きな被害が生じた。
被災を契機に解体される土蔵が続
出したため、
地域の建築士が金沢等の左官職人と協力
し、伝統工法等による修復を検討する活動を行った。
しかく白河市における
土蔵の被害 17(5)大規模な基盤整備を行う場合、曵き家等の手法を用いて基盤整備後の再建を図る
しろまる嵩上げや区画整理等の大規模な基盤整備が予定されている場合で、現地においてそのまま保
存することが困難である場合、歴史的建造物等の曳き家や部材の解体保存を行うことで、基
盤整備後の再建につなげることが考えられる。
しろまる津波等で大破した歴史的建造物であっても、部材を丁寧に保存したり図面等を保管しておく
ことで、将来的な再建につなげることが考えられる。
[施策例]
☞民間ファンドの活用
東日本大震災復興交付金の効果促進事業による買取、修理等
くろまる事例4:嵩上げ等の大規模な基盤整備に伴う歴史的建造物の曵き家等(気仙沼市他)
しろまる宮城県気仙沼市内湾地区には、昭和初期の歴史
的建造物が多数集積していた。そのうち7棟が
国登録文化財であったが、津波により1棟が滅
失、3棟が大破した。
しろまる同地区の復興においては津波対策のほか、地盤
沈下復旧のため最低 1.8m 嵩上げが必要となる。
そのため、幾つかの歴史的建造物については、
現地における早急な修理が困難な状況である。
しろまるこのため、予想される基盤整備に対応して、重
要な歴史的建造物については嵩上げ前に一時曵
き家を行い、嵩上げ後にもとの位置で再建し、
復興の中で活用することも検討されている。そ
の費用捻出のために歴史・文化資産の復興に係
る民間ファンドに対して申請がなされた。
しかく気仙沼市で破損した歴史的建造物
しかく被災後の気仙沼市内湾地区に残存する歴史的建造物
(緑色は一定の標高以上の丘陵地、色付の建物が目視調査で確認した歴史的建造物)
しろまるこの他、気仙沼市唐桑町においては、津波で大破した茅葺き民家について、屋根部分を含む部材
の多くが回収、保存されている。
しろまる陸前高田市今泉町においても、
かつての肝入屋敷であった吉田家の部材が地元住民により回収さ
れ、保存されている。
<凡例>
しかく 洋風建築
しかく 近代和風建築
しかく 伝統和風建築(町家型)
しかく 伝統和風建築(その他)
しかく 看板建築
しかく
しかく その他
浸水区域 18(6)地域住民等とともに歴史的建造物の活用を検討する
しろまる地域で親しまれた歴史的建造物は様々な活用方策が考えられる。地域の集会施設や商業、観
光振興の拠点として活用する場合、地域住民や市民団体等による活用検討を行うことで、地
域住民等による主体的な利活用の実現に結びつけることが望ましい。
しろまる歴史的建造物等は、その内部を活用しない場合でも、外観が見えるだけで地域の歴史文化を
伝える役割を果たすことができる場合がある。
くろまる事例5:地域住民による、歴史的建造物の活用の検討(気仙沼市)
しろまる宮城県気仙沼市内湾地区においては、被災後の8月
に地元商店会が呼びかけを行い、
早稲田大学の協力
を得て、
地域住民と学生たちによる被災後のまちあ
るきが行われている。
しろまるまちあるきの目的のひとつは、まだ失われていない
地域の資産を探し出すことであり、
このなかで内湾
地区に残る歴史的建造物の存在も再確認された。地域住民からは、これらの歴史的建造物の保全や、地
域における活用を望む意見も聞かれた。
しろまる公共的な目的で歴史的建造物を活用する場合、修復
前の段階で、地域住民等に呼びかけ、活用内容や、
活用に伴う整備内容について検討している事例は
全国に多くみられる。こうした地域住民の参加が、
修復後の活発な利活用や、
活用運営を担う住民組織
の設立等に結びついた事例がみられる。
しかく気仙沼市内湾地区で実施された被災後の
まちの資産を探すまちあるき
しかく市民による活用検討が行われ、修復後に活発に利活用されている。
(東京都練馬区 旧内田家住宅)
(左:区民による活用検討風景 右:修復後の活用されている様子) 19【基本的な方向性】
【基本的な方向性を実現するための方策】
(1)地域らしさを形成している歴史的な景観特性を解読し、景観の構成要素を把握する
しろまる日頃から見慣れた風景であっても、山や海等の地形、道路や街区の形状、建造物の特徴等が
関連しあい、地域ならではの個性ある景観が生み出されている。地域で受け継がれてきた景
観の特性を解読し、景観を構成する重要な要素を把握することが望ましい。
しろまるそのためには、古地図や古写真を調べて地域の成り立ちを調べ、昔から変わらない要素(地
形、古い道筋、敷地割等)を見い出す、他地区の景観と比較するなどの作業を行うことが有
効である。
しろまるまた、地域住民が愛着を持っている景観やその構成要素について、ワークショップ等により
意見を聴取することも考えられる。
(2)大規模な基盤整備等に伴う景観の変化を予測し比較検討する
しろまる復興に伴い、区画整理や再開発等の面的な基盤整備や防潮堤の建設が予定されている場合は、
地域の景観が大きく変化することが想定される。
しろまるこうした場合は、写真や地図等を用いて歴史的な景観がどのように変化するかシミュレー
ションを行い、比較検討することが望ましい。
しろまるこのような比較検討の中で、変えるべきではない、歴史的な景観を構成する重要な要素を明
らかにすることにより継承の可否を判断することが考えられる。
2-1.従前市街地の整備等における地域らしさの再生・創出
2.基盤整備等における歴史・文化資産を活かした復興まちづくり
くろまる従前市街地において、
復興に伴い面的な基盤整備
(区画整理や再開発等)
を行う場合は、
地域の歴史文化に配慮したデザインを行い、住民が愛着を感じる地域らしさを継承し、
個性と魅力ある景観の創出を図る。
くろまる例えば、地域の景観を生み出す重要な要素(海や川への眺望、古い道筋、敷地割、建造
物の形態意匠等)を明らかにして継承することで、地域らしい魅力ある景観が創出でき
る。
しかく気仙沼市の歴史的まちなみを構成する歴史的建造物(被災前)
(資料提供:311 まるごとアーカイブス、独立行政法人
防災科学技術研究所)
しかく気仙沼の眺望点である安波山から気仙沼湾の眺望(被災前)
(資料提供:311 まるごとアーカイブス、独立行政法人
防災科学技術研究所) 20くろまる事例1:基盤整備による歴史的景観の変化を比較検討(気仙沼市)
しろまる宮城県気仙沼市内湾地区は、
細浦と呼ばれた入り
江を徐々に埋め立てて延伸した市街地で、
魚町は
江戸時代には魚河岸が存在した。
しろまる昭和4年(1929)大火後に、港に面した岸壁沿い
に魚問屋等が建ち並んだ。
漁船が帰港する海側に
正面を向けた建物が並び、
棟に屋号を掲げて
「屋
号通り」
と呼ばれた。
三陸沿岸では珍しく防潮堤
が設けられず、
海と一体的な空間が形成されてい
た。
また室根山や安波山等の背後の山々とまちな
みが調和して、
気仙沼を代表する景観として親し
まれていた。
しろまる東日本大震災により、
魚町の岸壁沿いの家屋は甚
大な被害を受けた。
しろまる魚町における復興は、津波対策として、地盤嵩上
げ、
防潮堤整備などの幾つかの基盤整備手法が検
討されている。
それぞれの基盤整備に伴う歴史的
景観の変化や景観創出上の留意点等も比較検討
されている。
しかく気仙沼市内湾地区の海から見た景観(明治期)
しかく気仙沼市内湾地区の海から見た景観(被災前)
しかく気仙沼市内湾地区の基盤整備手法の比較
しかく海岸に防潮堤を設置する案
・魚町等の海との一体感、海からみた景観特性が
失われる。
しかく海岸に防潮堤を建設する案
・嵩上げ部分の歴史的建造物や歴史的町並みの保
存が難しくなる。
しかく内陸部に引き堤を設置する案
・海との一体感は継承できる。引き堤外側の空間
や建造物のデザインが重要だと考えられる。
防潮堤の位置
公園等に活用する地域
土盛嵩上げの範囲
・緑色は一定の標高以上の丘陵地
・色付の建物が目視調査で確認した歴史的建造物 21(3)面的な基盤整備等における地域らしさの再生・継承のための配慮事項
しろまる土地区画整理事業や市街地再開発事業等の面的な基盤整備等を実施する場合は、以下に示す
ような様々な従前市街地の景観特性や構成要素のうち、地域にとって重要なものを判断した
上で、継承する工夫を行うことが望ましい。
イ.遠景景観に係る要素
(i)海や川との関係性を継承する・太平洋沿岸地域の港町や漁村等は、
山と海に挟まれ、
多様で個性的な景観を生み出しており、
舟運で栄えた市街地等、海や川と密接な関係を持って発展している。こうした市街地は、海
や川からの見え方、見られ方に特徴があり、大規模な基盤整備を行う場合でも、その継承を
図ることが望ましい。
・防潮堤や地盤嵩上げ等により、海や川との位置関係等が変化する場合でも、堤の配置や水際
のデザイン等により、海や川との関係性の継承、創出に努めることが考えられる。
(ii)重要な眺望点やランドマークを保全する
・市街地を取り巻く山等からの眺望は、文人墨客が訪れ眺めた等、歴史的に受け継がれ、親し
まれたものが多く、こうした眺望点から見える景観を保全することが望ましい。
・また、歴史的に有名な眺望点だけではなく、市街地の小高い丘等、地域に親しまれた身近な
眺望点から見える景観についても保全継承を検討することが望ましい。
・一方、歴史的に受け継がれたランドマークは、その対象となる建造物や緑地等の保全と、見
え方の継承を図ることが望ましく、特に、山の高台に位置する社寺やその周辺の緑地は、津
波の際の避難先を示す場合もあり、そのような観点から保全継承することが望ましい。
[施策例]
☞景観計画等による重要な眺望景観の保全 等
ロ.市街地景観に係る要素
(i)従前市街地の都市基盤の形状に配慮する
・市街地景観の特性は、道路の形状・幅員、街区の形状、敷地間口等、都市基盤の形状に由来
していることが多い。基盤整備を行う場合は、道路や街区の形状や相互の関係性等、従前市
街地の都市基盤の形状に配慮して、地域に馴染み深い景観を生み出すことが望ましい。
(ii)重要な道筋や路地を活かす
・旧街道筋等の古い道筋は、多くの人や文化が行き交った歴史的に重要な道筋である。またこ
うした旧道を骨格とした市街地形成がなされている場合が多い。地域の歴史文化や成り立ち
において重要な意味をもつ道筋は、その継承を図ることが望ましい。
・古い道筋は弓なりであったり、町境が鉤の手にされるなど特徴がある。また、表通りと裏通
り、路地等の道路の役割に応じて形状や幅員に変化がつけられている。こうした道路形状は
まちなみのまとまりを生み出すなど景観形成にも寄与している。重要な道路は基盤整備の中
で、その位置や形状の踏襲を図ることが望ましい。
・歴史的な路地は地域に親しまれたものが多く、その保全継承を図ることが望ましい。 22[施策例]
☞幅員 4m未満の建築基準法第 42 条第 2 項道路について、
建築基準法第 42 条第 3 項道路としての指定に
よる歴史的な路地の保全
ハ.まちなみ景観に係る要素
(i)道路幅と建造物の高さの比率を継承する
・道路幅と沿道の建造物の高さの比率(D/H比)は、まちなみ景
観の特性を生み出す重要な要素であるため、
その継承を図ることが
考えられる。
D/H比が大きいと、
広々とした開放的なまちなみ景
観となり、
D/H比が小さいと、
路地のように界隈性の強いまちな
み景観となる。
[施策例]
☞建造物の高さに係る地域住民による自主的なガイドラインの策定、景観法に基づく景観協定の策定
(ii)まちなみに統一感を生み出す敷地の間口を継承する
・宿場町や港町等の各地域によって間口の幅等に特徴がある。例えば、表通りに面して間口が
狭く奥行きが長い短冊形の敷地を並べている場合があり、こうした間口規模はまちなみ景観
の形成に大きく寄与しているため、その継承を図ることが望ましい。
・敷地間口の継承にあたっては、基盤整備のデザインにおいて敷地割に配慮するほか、敷地間
口が広くなってしまう場合には、歴史的な敷地間口幅に配慮した建造物の外観を分節する等、
建造物の形態・意匠で対応することも考えられる。
[施策例]
☞建造物の形態・意匠に係る地域住民による自主的なガイドラインの策定
景観法に基づく景観協定の策定
(iii)建造物の形態・意匠や位置を継承する
・建造物の屋根形式等の形態・意匠には地域の特色がある。また、建造物の位置や敷地境界部
についても、例えば商家町や宿場町では道路にそって建つ等、市街地の成り立ち等によって
大きく異なる。こうした建造物の形態・意匠や位置はまちなみ景観の創出に大きく影響する
ため、建造物のデザインコードの設定等により、地域らしさの創出を図ることが望ましい。
[施策例]
☞建造物の形態・意匠や位置に係る地域住民による自主的なガイドラインの策定
景観法に基づく景観協定の策定 23ニ.その他の要素
(i)土地の記憶を伝える
・従前市街地における災害の記憶を伝え、防災意識を高めていくために、例えば過去の津波被
害を物語る石碑等の資産は、同じ位置で保全を図ることが望ましい。
(ii)基盤整備の境界部分のまちなみデザインに配慮する
・基盤整備を実施した地区の周辺には歴史的まちなみが残存している場合がある。こうした場
合は、地区の連続性や周辺景観に配慮した、境界部のデザインとすることが望ましい。
くろまる事例2:短冊形の歴史的な敷地形状に配慮した宅地や建造物のデザイン(石巻市)
しろまる石巻市の歴史的市街地は、
間口がせまく奥行きが
長い短冊形の敷地割りをしており、
建物は道路に
面して建てられる。
こうした敷地形状や建物配置
が踏襲されることで、
町家等の歴史的建造物は残
されていなくても、間口が小さい建物が軒を並
べ、歴史を感じる景観形成に寄与している。
しろまる区画整理等で街区や敷地形状が方形に近いもの
によって間口幅が広がったり、
前庭を設ける等建
物配置が変化すると壁面線が揃わなくなったり
することで、景観特性は大きく変化する。
しろまる歴史的な景観特性の継承のためには、
区画整理等
の基盤整備においても間口幅を継承したり、
建造
物の位置についても協定で揃える等の工夫が考
えられる。
しかく石巻市中心市街地周辺の明治初期の川港の敷地形状
(推定)
くろまる事例3:近世港町の町割等に配慮したデザインコードの作成(石巻市)
しろまる宮城県石巻市の中心市街地は北上川を挟む3
つの宿場町が原型であり、北上川河口を浚渫
して川港が開かれ、東回り舟運の寄港地とし
て栄えた。その際に今日みられるような町割
がなされたものと思われる。
しろまる石巻市の中心市街地は、
北上川に沿って主要街
路を通し、短冊形の地割を行っている。歴史
的建造物の残存数は少ないが、近世の町割の
形状を伝える街路、街区、地割等が、現在の
個性あるまちなみ景観を生み出していた。
しろまる被災後、
民間再開発や個別建て替えが進み、景観特性の変化が懸念されている。地域住民等
による「まちなか復興協議会」が設立され、
近世の都市基盤の形状を踏まえた建造物のデ
ザインコードが検討されている。
しかく昭和期の石巻市中心市街地のまちなみ
・近世の短冊形の町割りが近代以降も継承され、個性的な景観
を生み出している。今日でも均一な間口がまちなみに統一感
を与えている。 24【基本的な方向性】
【基本的な方向性を実現するための方策】
(1)移転先の高台市街地における歴史・文化資産の実態を把握し、地形や景観への配慮を行う
(i)地形や生業が作る、地域らしい景観特性を把握する
・東日本の太平洋沿岸地域は、地形・植生、漁業に代表される産業、道路や街区等の形状、公
共施設や社寺、住宅地等の配置、海岸部の松原等が関連し、それぞれの地域らしい美しい景
観が形成されている。市街地や集落近くの山頂から市街地等が一望できる場合もあり、古地
図や古写真、現地踏査等により、地域の景観特性を把握することが望ましい。
・長らく地域が育んできた歴史・文化資産の実態を把握し、地図等にプロットするなどにより
情報を整理する。
くろまる事例1:景観特性の把握(大船渡市、七ヶ浜町)
2-2.高台移転における景観等への配慮と歴史文化の継承
くろまる高台移転の検討にあたっては、長らく地域で育んできた歴史・文化資産の再生・活用、主要
な眺望地点から見て、地形や景観構造を極力変化させないこと等に配慮が求められる。
くろまるそのためにも、過去の津波による高台移転における歴史・文化資産や景観等への配慮事項や
工夫点等を学ぶことが大切である。
くろまるさらに、
低地の移転跡地では、
その市街地や集落で育まれた土地の記憶の継承が求められる。
くろまるこのように、歴史・文化資産の再生・活用や景観に配慮することにより、地域の産業や生活
文化の積み重ねにより育まれた、故郷の景観を継承することができると考えられる。
しかくリアス式海岸にある小さな漁村集落
(大船渡市根白地区)
しかく標高 50〜100m程度の丘陵地とその南側に広がる
市街地が基本的な景観構造である(松島内湾地区)
しろまる大船渡市旧三陸町は、
典型的なリアス海岸に小規模な漁村集落が数多く立地し、
根白地区や砂子浜地区等、
地形に沿って急峻な山並みを背景に、海や漁場を見下ろすようにまちなみが形成されている。
しろまる宮城県七ヶ浜町の菖蒲田浜地区は、海辺、松林・岩崖、丘陵地の緑地によって、基本的な景観構造が構成
されている。
しかく急峻な山並みを背景に立地する集落 しかく海岸沿いからは、海浜、松林・岩崖、背景の緑地で構成
される景観構造が確認できる。
(七ヶ浜町菖蒲田浜地区) 25(ii)主要な眺望地点から見て、地形や景観への影響を予測し、比較検討する
・模型やパース、CG等を用いた景観シミュレーション等を行い、景観への影響を予測し、地
域らしさをよりよく継承できる整備方策を比較検討することが望ましい。
(iii)景観構造を継承する
・高台移転に伴う造成や道路等の基盤整備は、地域の自然的・歴史的な要素を改変し、地域の
景観にインパクトを与える。このため、次の事項について十分に配慮することにより、景観
の基本構造を継承し、インパクトを最小限度にすることが望ましい。
くろまる事例2:高台移転における景観への配慮事項(七ヶ浜町)
海からの見え方に配慮した緑の配置
しろまる高台移転における景観への配慮事項としては、主要な眺望点から見て、地形の大幅な改変を避けるこ
と、緑のスカイラインを継承すること、造成に伴い植栽等を回復すること等が考えられる。
(写真は、上図の4からの眺望)
【景観への配慮事項の例】
しろまる地形や緑・植生
しろまる歴史・文化資産
しろまる主要な眺望点からの見え方(眺望点の選定例)
・地域のランドマークとなっている山、見晴らしの良い山頂、公共性の高い場所や市民が
親しんできた場所(駅、バス停、公共施設、公園等)
、歴史的に意味のある場所 等
しろまる右図の地区では、高台移転における景観への配慮
に関する検討を進めているが、1〜4の眺望点か
らの見え方について検討することで、地域の景観
構造の継承することが考えられる。
(注記)その際、本地区の海岸部が、国の特別名勝松島の
指定地になっていることから、その独特の地形、
松林・岩崖、展望地点への配慮が必要となる。
1新たに整備される公園
・海、海浜、松林・岩崖、
市街地等の地区が一望
できる場所
2海浜への主要アプローチ地点
・多くの市民や来訪者が利用する公共性の
高い場所の1つ
3地区のエントランス地点
・地区外から地区内にアクセスする道路で、
地区全体が一望できる場所
4主要な交差点(バス停)
・多くの市民や来訪者の利用が想定される公共性
の高い場所
しろまる宮城県七ヶ浜町は、津波により海浜付近の市街地や漁村集落が大きな被害を受けた。復興まちづく
り計画では、被害を受けた市街地や漁村集落が、複数の高台に移転する予定となっている。
高台移転予定地1324
地形の大幅な改変を避け、
緑のスカイラインを継承
緑のスカイラインを継承
高台移転予定地 26(2)過去の津波被害における高台移転での歴史文化の継承実態を学ぶ
しろまる過去の高台移転の多くは、従前の暮らし方や景観等を極力変化させないよう、次のような配
慮や工夫がなされている。高台移転整備の検討に際して、こうした点を参考にしつつ地域ら
しさを継承する工夫を行うことが望ましい。
【高台移転における配慮や工夫点】
・従前の集落単位・規模を可能な限り維持した集団移転による、コミュニティの継承
・従前の街区形状や町割、まちのスケールを踏まえた地区整備による、地域に馴染んだ景観
の継承
・移転地から海への眺めやアプローチ道路の確保等、漁業を生業とする暮らし方に配慮した
地区整備による、まちと海との関係性の継承
くろまる事例3:高台移転での歴史文化の継承(大船渡市)
しかく従前の目抜き通りを再現して整備したまちなみ しかく海へのアクセス通路の確保
しろまる昭和8年の津波後に高台移転を実施した綾里地区は、従前のコミュニティの規模やまちなみの形態を可
能な限り継承した造成計画を行っている。
しろまるまた、漁業を生業とした暮らしとして、宅地からの海への眺め、海へのアクセスや漁業に必要な作業空
間となる通路の確保等、海との関係性を考慮した地区整備が実施されている。
しかく大船渡市綾里地区における高台移転(右図)
(内務大臣官房都市計画課『三陸津浪に因る被
害町村の復興計画報告』
(1934 年)より作成)
海へのア
クセス通
路の確保
通路
目抜き通り
玄関 通路 擁壁 住宅
しかく移転地における従前の景観への配慮等【港地区】↑平地、港方面山手玄関
擁壁
従前の目抜き通りを再現して
整備したまちなみ
海への眺め、
作業空
間の確保
[平面図]
[断面図]
従前地
従前地
従前地
移転地
移転地
【港地区】
【石浜地区】
【田浜地区】 27(3)低地の移転跡地(市街地や集落)における歴史・文化資産を継承する
(i)被害を受けた市街地や集落が育んできた土地の記憶を継承する
・移転跡地となる市街地や集落では、その形態や被害状況に応じて、旧い道筋を活用した避難
路の整備、石材等の地場の自然素材の再利用、松の保全等によりこれまで地域が育んできた
歴史・文化資産を継承するとともに、浸水した範囲を示したりする等により今回の津波被害
を伝える歴史・文化資産の活用等を検討することが考えられる。
(ii)海と市街地・集落との関係を継承する
・漁村集落は海からの見え方、見られ方に特徴がある。従前の漁村集落が公園等の非居住地と
なる場合は、公園内の植栽や歩行者空間、避難路の配置・デザインの工夫により、海と市街
地や集落との関係を継承することが考えられる。
[施策例]
☞景観計画等による重要な眺望景観の保全★高台移転
予定地区
漁港の
ランドマーク
くろまる
くろまる事例5:海と市街地・集落との関係の継承の考え方(七ヶ浜町)
くろまる事例4:低地の移転跡地における土地の記憶の継承の考え方(七ヶ浜町)
しろまる宮城県七ヶ浜町菖蒲田浜地区は、
津波による被害を受けた低地の市街
地が公園・オープンスペースになる予定である。
しろまる本地区における土地の記憶の継承は、
既存の道筋を活かした避難路の
整備、既存の松の保存、敷地割りや石材等の再利用等が考えられる。
(注記)その際、
本地区の海岸部が、
国の特別名勝松島の指定地になっている
ことから、その独特の地形、松林・岩崖、展望地点への配慮が必要
となる。
しかく今後の事業で活用が考えられる
石材の例
しろまる津波による被害を受けた漁村集落の一部は、復興まちづくり計画において、公園・オープンスペー
スになる予定である。
しろまる海と市街地・集落との関係の継承には、高台に移転する住宅地と漁港を結ぶ主要な生活道路から海
への目線の確保に加え、漁港のランドマークと考えられる灯台や岩礁・松への目線に配慮した公園
の整備が考えられる。
(注記)その際、本地区の海岸部が、国の特別名勝松島の指定地になっていることから、その独特の地形、
松林・岩崖、展望地点への配慮が必要となる。
しかく漁港のランドマーク(灯台)への目線の確保の例
(右図のくろまる付近から)
高台移転
予定地区
低地の
移転跡地
しかく避難路として活用できる場所に
残る数本の松
しかく今後も避難路として活用が考え
られる既存の道筋の例 28【基本的な方向性】
【基本的な方向性を実現するための方策】
(1)地域で育まれた無形の歴史・文化資産を発掘し、価値を明らかにする
〇祭礼や民俗芸能には、文化財として広く社会的に価値が位置づけられたものだけでなく、昔
から地域では当たり前のように続いてきたものも数多く存在する。いずれも、地域らしさを
継承するうえで重要な要素となっている。特に、広く社会的にその価値が明らかになってい
ないものについては、その歴史的意味や実施状況について資料収集や関係者へのヒアリング
等を行うことで歴史・文化資産として再認識し、価値を明らかにすることが望ましい。
くろまる祭礼や民俗芸能をはじめとした有形・無形の歴史・文化資産は、たとえば地域の生業等
と結びつきながら、各地で培われてきた。
くろまる基盤整備にあたっては、祭礼や祭礼を行う重要な場所を継承するよう配慮する。
くろまる祭礼等の歴史・文化資産と関連する重要な場所を継承することにより、地域の暮らしに
根差した復興まちづくりを進め、地域コミュニティの維持・再生を図ることができる。
2-3.祭礼等への配慮と地域コミュニティの維持・再生
しかく大槌まつり 神輿の水ごり(岩手県大槌町) しかく宿で行われた鵜鳥神楽
(岩手県釜石市箱崎白浜)
くろまる事例1:祭礼等の存在とその被害概況
(岩手県沿岸部)
しろまる岩手県沿岸部には祭礼や郷土芸能が広範囲に
数多く存在している。
しろまる津波等により、衣装等の道具や道具を収納して
いた小屋の流出等の被害を受けており、
特に宮
古市以南では壊滅的な被害を受けている。
(注記)(公社)全日本郷土芸能協会が 2011 年 10 月 30 日
現在で把握した情報をもとに作成。
文化財に指定され
ていない祭礼等も数多く含まれている。 29(2)祭礼や民俗芸能が持つ地域の求心力を認識し、継承する
〇祭礼や民俗芸能は、地域の求心力を持ち、地域コミュニティの維持に重要な役割を果たして
きた。震災後、例年実施されてきた祭礼を自粛しているところが多いが、祭礼や民俗芸能の
継承により、地域らしさを創り出し、地域コミュニティの維持・再生を図ることが考えられ
る。
〇祭礼や民俗芸能の実施にあたっては、日頃の地域の保存活動が不可欠であり、必要な場所づ
くりや用具の調達等への支援が考えられる。
[施策例]
☞民間のファンドの活用
(3)祭礼・民俗芸能と町の使い方やまちなみとの関係を把握し、復興整備において配慮する
〇祭礼が行われる際、巡行路は浜街道等の昔からある道筋を重要なルートとして位置づけてい
る地域が見られる。祭礼にはハレの舞台も重要であり、このような場所の多くは歴史的意味
を持ち、水辺等の自然環境を上手く利用している。そこで、市街地や沿岸部の復興整備にあ
たっては、以下の視点で事前に地域の状況を確認し、配慮を行うことが望ましい。また、祭
礼が行われる範囲は、地域によって複数の集落を含むもの等もあり、規模に応じた配慮が必
要になる。
【復興整備を検討する前に確認すべき事項】
・祭礼や祭礼が行われる街道自体の歴史的意味を調べる
・巡行が行われる道・ルートを調べ、祭礼を行う上で重要な区間を確認する
・祭礼を行う上で重要な場所を把握し、その歴史的意味や空間的な特性を確認する
【復興整備にあたって配慮すべき事項】
・祭礼を行う上で重要な場所に対しては、ハレの場に相応しい設えとする
・海や川で祭礼が行われる際には、水面へアクセスできるルートを確保する
・祭礼の際に地域住民が祭を観覧することができるように配慮して、広場や歩道等の
屋外空間をデザインする
・祭礼に関するこれまでの風習に配慮して、沿道の建物をデザインする
くろまる事例2:陸前浜街道に関わる祭礼を活かしたまちなみの価値の再発見
(旧奥州中村藩の野馬追)
しかく陸前浜街道での騎馬行列(南相馬市原町区)
しろまる相馬野馬追は、旧奥州中村藩領(福島県陸前浜街道北部)で行われる伝統行事である。藩政時代は、藩
主相馬家の年中行事として、領内の牧場で野馬を追い、その馬を奉納する行事であったが、明治時代
以降、神社主催の神事に変わり、形を変えながら継承されている。
しろまる相馬野馬追は、神事自体のほか、神事の会場となる神社、騎馬武者が通る陸前浜街道など、関連する歴
史・文化資産が多数存在している。
しろまる相馬野馬追の再開が検討されている。
あわせて野馬追に関連する歴史文化遺産や、
祭礼の背景となる歴
史的まちなみの価値について、再認識する動きが生まれている。
しかく陸前浜街道沿いの歴史的建造物(南相馬市原町区) 30くろまる事例3:祭礼を行う際の町の使い方(釜石市鵜住居、大槌町町方・安渡)
<釜石市鵜住居:町の中心となる神社でその周辺を中心に行われる祭礼>
しろまる鵜住神社の祭礼では、山車が市街地を巡行し、それにあわせて様々な民俗芸能が行われていたが、
津波により祭の舞台となった地域が壊滅的な被害を受けた。
しろまる巡行ルート:三陸浜街道はたびたび山車が通るルートとなっているなど、
祭礼上も重要な道である。
しろまるハレの場:神社や祭と歴史的な由来のある場所、地域住民が集まって観覧可能な広場等の空間にお
いて、民俗芸能が行われている。
<大槌町町方・安渡:複数の地域にまたがって広く行われる祭礼>
〇小鎚神社と大槌稲荷神社の祭礼である大槌まつりでは、神輿の巡行とともに町方と安渡地域を中心
に広範囲に大神楽や虎舞、鹿踊り等の様々な民俗芸能が練り歩いていたが、津波により市街地は壊
滅的な被害を受けた。
しろまる祭のルート:三陸浜街道の町の中心となる区間の沿道には、神輿の巡行にあわせて郷土芸能団体が
連なって練り歩き、多数の観客が集まる。
〇ハレの場:小鎚川と大槌川の河口部での水ごりや、大槌湾では多数の船による海上渡御が行われ、
祭のハイライトとなっている。
しかく祭礼と町・道筋の関係(上:釜石市鵜住居 下:大槌町町方・安渡)
鵜住神社
小鎚神社
大槌稲荷神社 31【基本的な方向性】
【基本的な方向性を実現するための方策】
(1)土木遺産や産業遺産を広域的なつながりを伝える資産として把握し、再生・活用する
しろまる土木遺産や産業遺産は、地域の発展の歴史を伝える資産であり、今後、復興まちづくりにお
ける観光や地域間交流、レクリエーション等の多面的な活用により、地域の新たな魅力づく
りに寄与する可能性を有している。
しろまる土木遺産や産業遺産は、広域的なつながりを伝える資産として重要な場合があり、復旧・復
興においてその歴史的・文化的価値を把握した上で、
関係市町村の広域的な連携体制により、
重要な拠点や線的につながる資産を一体的に再生・活用することが望ましい。
しろまるあわせて、復旧・復興にあたっては、歴史的・文化的価値を維持するために、石積み等の伝
統工法が使われているかを把握し、その復旧方法について専門家の技術的な支援を受けるこ
とが望ましい。
くろまる地域には、地域の発展に寄与してきた街道や運河等の土木遺産や、集落や藩政時代に地域で
継承されてきた祭礼等、広域的なつながりを伝える歴史・文化資産が存在する。
くろまるこのため、県や市町村の文化財、観光、道路・河川、都市計画等の各部局の連携の下、広域
的な歴史・文化資産の再生・活用を図る。
くろまるこのように、広域的な歴史・文化資産を再生・活用し、観光・産業の振興を図ることにより、
東北地方全体の活性化につなげることができる可能性がある。
3.広域的な歴史・文化資産を活かした復興まちづくり
しかく7市町にまたがる貞山堀
しかく気仙沼市や陸前高田市と一関市を結ぶ街道沿いにあるまちなみ
(左:住田町世田米、右:一関市千厩) 32(2)土木遺産・産業遺産とその周辺の景観を一体的に再生・活用し、地域らしさを創出する
しろまる土木遺産や産業遺産は、市民の生活や地域の産業と密接な結びつきがあるため、その周辺の
風景や土地利用と一体となり、地域固有の風景が形成されていることがある。
しろまる土木遺産・産業遺産の再生・活用においては、それとつながりの深い市民の生活や周辺の土
地利用等を含め一体的な風景として捉え、土木遺産・産業遺産とその周辺の景観を一体的に
再生・活用することが望ましい。
[施策例]
☞景観計画の策定と景観誘導
(3)広域的な地域単位で連携して、歴史的な街道沿い等に存在する歴史・文化資産を活用する
しろまるこの地域では、三陸浜街道・陸前浜街道と奥州街道、これらを東西に結ぶ街道等の街道が多
く残っている。これらの街道には、宿場町のまちなみや歴史的建造物だけでなく、市町村の
単位を超えて広域的に開催される祭礼等が存在している。
しろまる復興まちづくりにおいて、このような歴史・文化資産を活用する際には、市町村や宿場町等
の単位を超えて、街道や旧藩領等の広域的な地域単位で、関連する歴史・文化資産を保全活
用することで、地域全体としての魅力向上を図ることが考えられる。
くろまる事例1:土木遺産群とその周辺の文化的な景観の再生(貞山堀とその周辺)
しろまる貞山堀は、
東北地方の内陸水運を目的として江戸時代
から明治時代にかけて整備されたが、その後、生業
としての漁業、
農地や集落の排水、
サイクリングロー
ド等のレクリエーション等の利用が付加されてい
る。
しろまるまた、
貞山堀沿いの松林や仙台平野に広がる集落と居
久根は、貞山堀との関係性を保ちながら、地域固有
の風景として、広く認知されている。
しろまるこのように、
貞山堀の歴史的・文化的価値に加え、
人々
の暮らしと密接な関係により形成された地域固有の
風景は、文化的な景観としての価値もある。
しろまるこのため、
貞山堀と合わせて周辺の景観を一体的に再
生していくことが考えられる。 しかく仙台平野に広く見られる集落と居久根
くろまる事例2:陸前浜街道に関わる歴史・文化資産を活用した広域連携(旧奥州中村藩の野馬追)
しろまる相馬野馬追は、旧奥州中村藩領(福島県陸前浜街道
北部)で行われる伝統行事である。
しろまる相馬野馬追が行われている 2 市 3 町 2 村は旧藩領と
ほぼ同じ範囲である。3 日で行政界をまたぎながら
3 ヵ所の神社を主な会場として神事などが行われ
る。被災前は各市町村が連携して開催されていた
が、被災後は規模を縮小し開催されている。
しろまる相馬野馬追を旧藩領の単位で捉えると、野馬追の土
手や、
神事の背景となる個性的な宿場町のまちなみ
等、市町村単位を超えた、多彩な歴史・文化資産が
連続しながら分布していることがわかる。
しろまるこれらの歴史文化資源の活用においては、旧藩領の
市町村が連携することが考えられる。
しかく相馬野馬追に係る市町村(図中色付)
・カッコ内は旧藩領内の郷名。
旧藩領と現市町村範囲がほぼ同じに
なっている。
相馬中村神社
相馬太田神社
相馬小高神社
野馬追祭場地 33(4)歴史・文化資産の広域的な活用に向けて、横断的な連携体制を構築する
しろまる広域的な歴史・文化資産を再生・活用するためには、県と市町村間の連携や、道路・河川、
文化財、観光・レクリエーション、都市計画・まちづくり等の関連部局による横断的な連携
体制を構築し、広域的かつ多面的な観点から検討することが望ましい。
しろまるまた、岩手県と宮城県をまたがる気仙沼街道のように、県を超えた連携が想定されることか
ら、今後、歴史・文化資産の活用して、広域的な観光計画等を立案することが考えられる。
くろまる事例3:奥州街道と浜街道を東西に結ぶ街道等の歴史・文化資産を活用した広域的な
観光連携(気仙沼街道、千厩街道)
しろまる平泉、
一関と気仙沼を結ぶ街道筋
(千厩街
道、気仙沼街道)は古くは奥州藤原氏が
金の輸送に使用した道筋といわれてい
る。
しろまる街道の中間地点には、
千厩、
室根といった
歴史的市街地があり、伝統的酒造施設や、
気仙沼や街道筋の歴史的ランドマークで
あった室根山等、魅力的な歴史文化資源
が分布している。気仙沼市内湾地区には、
昭和初期の歴史的建造物群が被災しなが
ら残存し、これらの修復と活用の動きが
みられる。各市街地はそれぞれ岩手県、
宮城県に分かれているが、歴史文化的に
繋がりを持っている。
しかく千厩街道、気仙沼街道沿いの歴史的市街地
しろまるそこで奥州街道と浜街道を東西に結ぶ街道を介して、平泉や一関などの拠点都市、千厩や室根などの中継
地域、海岸部の気仙沼内湾地区について、広域的に連携して、歴史文化の視点から観光に取り組むことが
考えられる。街道筋の埋もれた歴史文化資源の発掘や、それらを活かして魅力的に結ぶ観光モデルコース
づくりなど、内湾地区の復興に寄与する取り組みが考えられる。
くろまる事例4:歴史・文化資産の広域的な活用に向けた横断的な連携体制の構築(貞山堀)
しろまる貞山堀は、阿武隈川河口から松島湾を経て旧北上川
にかけて、
海岸線に沿った形で開削された内陸運河
である。線的につながることで、松林は防潮機能を
高め、
サイクリングロードも魅力的な空間として活
用されてきた。
しろまる震災により、全区間にわたり運河内及びサイクリン
グロード、
松林等が、
大きな被害を受けた。
同時に、
石井閘門・同資料館、野蒜築港・同資料館等の拠点
も大きな被害を受けた。
しろまる復旧するにあたっての石積み等の伝統工法は、現在
のところ詳しく把握されていない。
しろまる今後の復旧・復興にあたっては、横断的な連携体制
のもとで検討を行うとともに、
伝統工法を用いた施
設について専門家の技術的な支援を受けることが
望ましい。
しかく貞山堀に関連する施設

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